GETTIN AWAY / COACOA(1997 / CD / BROADMOOR 1 RECORDS)
ルイジアナ州ニューオーリンズ出身の女性シンガーソングライター BRENDA BUTLER こと COACOA によるデビュー・アルバム。憂いを帯びたアルト・ヴォイスから可憐なソプラノ・ヴォイスを聴かせる魅力的なソウル・シスターである。90年代中頃から地元のギャングスタ・シーンで客演シンガーとしてキャリアを積んでいたようだが、その縁もあって、同時期にギャングスタ・シーンを中心にプロデューサーとして活躍していた才人 DON B. こと DON BARTHOLOMEW が彼女のデビュー・アルバムを手掛けることとなるが、実はこの男…「ニューオーリンズ・リズム＆ブルースのパイオニア的存在」とも呼ばれ、ジャズ・バンドマスター／コンポーザー／プロデューサー／アレンジャーとして数多の功績を残し、ソングライターの殿堂やロックンロールの殿堂にも名を残すレジェンド＝DAVE BARTHOLOMEW の息子である。父親の影響で幼少期から音楽漬けだったらしく、90年代前半には友達3人＆兄弟 RON B. と5人組ヴォーカル・グループを結成して、’93年にアルバムを1枚だけ残しており、それが90'sフリーク垂涎の超御宝盤『FRIENDS 9』である。ということで、ヒップホップだけでなく R&B/SOUL にも造詣が深いということが明らかになった本作のプロデューサー DON B. だが、やはり当時はギャングスタ・サウンドに傾倒していたということもあって、本作は退廃的な雰囲気をまとった硬質なサウンド・メイキングだが、楽曲の方はスムース・メロウな甘い魅力を放っている。また随所でサックスほかインスト陣による好演がメロウネスに一層拍車を掛けている。冒頭①ではＧフリークの間で高い人気を誇る同郷のラッパー MR. IVAN がホストとして主役 COACOA を紹介する役割のはずだが、彼の独壇場と化したゴリゴリのＧラップ・ナンバーに仕上がっている。それ以降は COACOA の可憐な歌声で魅せるスムース・メロウ・ナンバーが大半を占めており、小鳥のさえずりから始まるスロウ・ナンバー④では CYRIL FRANCOIS なる無名の男性シンガーと濃厚なデュエットを繰り広げている。どこか儚げな魅力をも感じさせる90年代インディ・ソウルの秘宝的逸品。
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